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捫参記

Невозможное сегодня станет возможным завтра.

札幌喫茶紀行・大通編其の壱

最初の記事として、札幌喫茶紀行と銘打って行きつけの喫茶店を紹介して行こうと思う.ただ名前は伏せておく.もっとも「大通編」と名付けたものの続編を執筆できるかどうかは怪しい.なぜなら新規開拓にはそれなりのバイタリティが必要なのだ.

元来喫茶店探しというものは徒歩にて達成されるものだと思う.それは以前の神田界隈,特に神保町での形態を踏襲しているからでもあるが,やはり珈琲の匂いや雑然としたビルの一角にある店を発見するためには徒歩でなければ勘付くことはできないように感じる.

私が春から根城にしている札幌は,比較的新しい都市であり街路は整然と整備されている.この点が神田界隈の入り組んだ雑然という感じと大きく異なる点で,まるで自分が座標に置かれた点のように感じることもある.これは慣れると便利なもので,自分の位置を俯瞰するように移動することができるようになるのである.この「座標」の軸となっているのが大通である.今回はこの大通界隈の喫茶店を紹介する.

その喫茶店は大通と札幌一番街とを結ぶ細い小路沿いの雑居ビルにある.この一番街というのは札幌で最も古い商店街らしく,個人的に愛してやまないジュンク堂ジュンク堂は数ある本屋の中でも陳列方法がすばらしい)や,東京で言う所の世界堂にあたる,大型文具店藤井セントラル,Apple Storeなど,時間と金を吸い上げられる魅力的な店が軒を連ねる危険な界隈である.

いつものようにジュンク堂で本を購入し,ふらふら歩いていたある日の昼下がりである.近頃はすっかり寒くなり,雪は積もっていないとはいえ道外出身者にはすでに厳しい寒さであるから,早いところ地下道に潜るか店に入りたい気分であった.駅の方へ向かおうと小路を抜けようとしたところ,雑居ビルの前に珈琲カップのマークが書いてある看板が出ている.英語で店名だけ出ており,何やら怪しいが経験則からこのような喫茶店はうまい珈琲を飲めることが多い,と一人納得し入ることにした.細い廊下を詰めて古いエレベーターに乗り最上階へと上がる.他の階にも喫茶店が入っているようでさながらビル全てが喫茶店のようである.

フロアに入ると音楽が溢れてくるのがわかる.こぢんまりとした喫茶店だがタンノイ(?)の大きなスピーカーが据え付けられ,ジャズがいい感じで鳴っている.カウンターとテーブルを分ける棚にはギッシリとレコード盤が入っており造詣が深いのだなあと感銘を受けた.

肝心の珈琲は苦味が強く私の好みである.私は酸味が苦手で苦味の強い珈琲が好きなのだが,この店のフレンチはまさに私の想像通りの味である.昼下がりであったからケーキセットも頼んだが,その日はさつまいものシフォンケーキであり,値段も比較的安く美味しかったため大変満足であった.

この喫茶店の良いところはまず他人に見つかりにくいということと,静かに美味い珈琲を啜ることができる点にある.時間帯も9時から24時であるから平日も使うことができ足繁く通うことができる.外へ出るのも億劫になる冬場だが,珈琲を飲むために街へ出て運動するのもいいのではないかと思う.